( 1 )表記は、「色葉字類抄」に「意見」とあるが、中世後期の古辞書類になると「異見」とするものが多く、「又作意見」(黒本本節用集)のように注記を添えているものも見られる。近世の節用集類も「異見」を見出し表記に上げているが、明治時代に入ると典拠主義の辞書編纂の立場から「意見」が再び採られるようになり「異見」は別の語とされた。文学作品の用例を見ても、中世後期から近世にかけては、「異見」が一般的であった。
( 2 )「意見」は、「色葉字類抄」に「政理分」と記されていることや「平家物語」の用例によると、本来は政務などに関する衆議の場において各人が提出する考えであった。そのような場で発言するには、他の人とは異なる考えを提出する必要がある。そのようなところから、「異見」との混同が生じたものと思われる。
( 3 )中世も後期になると、「異見」の使用される状況も拡大し、二者間においても使用されるようになった。それに伴い、②の意味も生じてきた。最初のうちは、相手が目上・目下に関わらず使用されていたが、訓戒の意が強くなり、次第に目上から目下へと用法が限定されてきた。
ある特定の事物や人物、さまざまな社会的な問題やできごとに対する態度、信念、考え方、価値判断などを、ことばによって表明したものをいう。意見は、家庭生活や社会生活のなかで人々とのコミュニケーションや新聞、雑誌、映画、ラジオ、テレビなどのマス・メディア(大量媒体)との接触を通じて形成され、しばしば社会の伝統や慣習に対して批判的であるが、知識のような一貫性や確証性に欠け、感情的で漠然とした意思表示にとどまることもある。いわゆる態度測定や世論調査は、普通、言語的に表明された意見の収集、分析によっているわけであるが、権威主義的色彩の濃い社会や制裁的圧力が懸念される場合には、内面的意見と表面的意見が使い分けられ、真実の意見の動向がとらえられないおそれも生じる。また、意見が直接現実の場面に結び付かず、観念的なことばのうえでの原則論や感情論、空理空論に陥ることもある。
[辻 正三]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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